モノ売りからコト売りへは正解?本当に必要なのはコレです!
大手広告会社、大手有名マーケター、有名企業出身のコンサルタント。
一般的に「権威」というものを持っていることで影響力が強い方達が、2023年になっても声高らかに言っているのが「モノ売りからコト売り」という話しです。
話しだけを聞くと、とても良い話しですし、自分たちも「コト売り」へ変化しないといけない。そんな風に感じて会社の仕組みを変えようとされる、そんな経営者の方達も多いと思います。
しかし、この話しを信じて変化を起こすなら、ちょっと待ってください。
目次
1: ちまたで耳にする「モノ売りからコト売り」という話
僕の覚えている限りでは、「モノ売りからコト売り」という話しが登場し、この変化を会社の仕組みに取り入れ成功していたのは、2019年以前です。
そう、2019年には「モノ売りからコト売り」に関して、僕の仕事周辺では「当たり前」のことでした。
でも、そんな「当たり前」のことが、2023年の今も「これが一番」とでも言いたげに発言されています。
さて、この「コト売り」という言葉ですが、「コト」とは何を指しているのでしょうか?いくら良い考え方だったとしても、ここを理解しなければいけません。
「コト」とは「体験」を指しています。すなわち「モノ」を売るのではなく「体験」を売りましょう。そんな話しです。
そこで、モノを売るのではなくコトを売るとなると、どんな手法をみなさん考えるのかというと、
例えば、「お弁当」を売るのではなく「旅の体験」を売るというような発想になります。これ、間違いではないのですが、よくよく考えてみてください。
いくら「モノ売り」から「コト売り」へ変化すると言っても、あなたの前にやってきた顧客は「モノ」に対して対価を払いますから「お弁当」を全く売らないというのはNGです。
この場合、正確には「お弁当を買ってもらって、楽しい旅をしたような体験をしてもらう」ような販売手法を講じるという意味になります。
モノ売りからコト売りというと、体験ばかりに注目する人がいるのですが、「モノを売ることでコトを感じてもらう」ことを目指す必要があります。
また、コト売りとは、究極的には「顧客価値向上」を考えたときに意味のあることですから、コト売りを始めたからといって、即売上に繋がることはほとんどありません。
コト売りを半年、1年と継続したことで、顧客があなたの会社やお店に感じる価値が向上し、その結果として売上がアップするのです。
よくある商工会などのセミナーでは「コト売りする=すぐに売上アップ」という図式がイメージされてしまっていますが、これはほとんどのケースで実現しません。
繰り返し、繰り返し、何度も何度も「モノ」から感じられる「コト」を提供してこそ、売上につながっていきます。
2: 「コト売り」を成功させるには「モノ売り」できないとダメ
コト売りを成功させるためには、モノをどうにかするのではなく「体験型」のセールス手法を使えば売上が上がると想像する人が多いようです。
これ、大きな間違いでして、コト売りによって成功させるためには、まず「モノ売り」がきちんとできていないといけません。
なぜなら、モノが良くない、モノ売りがきちんと出来ていない、そんな会社やお店が、いくら費用と時間をつかって「体験型施策」を講じたとしても、そもそも「モノ」が良くないので誰もお金を出しません。
例えば、特別に品質の良くない商品を販売している(モノ売り)のに、SNSやスマホアプリに力を入れて「コト売り」しようとしても、モノがイマイチなので売れません。
コト売りという言葉だけが一人歩きをし、何か良く分からないけれど「コト」を売れば儲かるような風潮も強いですが、まずは「モノ」が重要なのです。
厳しい言い方になりますが、「モノ売り」が出来ていないのに「コト売り」するのは詐欺に近い行為だと僕は感じています。
良くないもの、良くない売り方を「隠す」「ごまかす」「曖昧にする」方法として「体験」という美しい言葉で「コト売り」しているだけですから。
3: これから本当に必要な変化はコレです!
2023年の今、本当に必要な変化は
モノ売り→コト売り→共感
これからは「共感」という言葉がキーワードです。
共感は「コト(体験)」と「モノ(商品やサービスの内容)」のどちらも「これは良い」と感じられないと生まれません。
日本人の得意な「とにかく多機能」「とにかく付加価値が多い」というものではなく、顧客行動のタイミングに合わせて最適な提案ができるのかどうかが重要になってきます。
すなわち、マーケティング視点で見るなら、これからは「カスタマージャーニーマップ」がとても大切になってくるということです。
そして、カスタマージャーニーマップには、
- 検索(探しているタイミング)
- 調査検討(調べて比較するタイミング)
- 購入行動(お店またはネットで購買)
- 口コミ(使ってみた感想をSNSで共有)
- 共有された情報での共感
このようなそれぞれのタイミングを予測して組み込むことが欠かせません。
4: 製造業が「コト売り」する意味はあるのか?
製造業を営んでおられる会社さんが「コト売り」をする意味はあるのか。これは大変難しい話しです。
製造業とは本来、どこかの企業や商社から依頼のあったものを作って納品し収益を得るところです。そのため「コト売り=体験」と言っても、実際には「体験」よりも「品質」「価格」「納期」が重要視されてしまいます。
もし製造業の会社さんが「コト売り」へビジネス変革を考えるのなら、それは販売するターゲットを「消費者」へ広げる、または変えるという意味になってくるはずです。
この場合、これまで自分たちの経験がまったくない「販売方法」「販売視点」を見つけるところからスタートしますので、1年や2年で成果が出てくることはありません。
会社としては昔から存在していても、起業したての会社と同じ経験をすることになります。そのため、昔から在籍されている社員さんの中には反発も起こるでしょう。部署間での温度差も激しくなるでしょう。
会社の中に「新会社」「新業態」が発生している状態ですから、これは仕方ありません。
この状態を想定し、5年、10年先に成功させるという計画をお持ちなら、製造業さんも「コト売り」を目指されれば良いと僕は思います。
いっぽうで、「体験型のイベント」「ちょっとしたキャンプグッズ(スプーンとかフォークとか)」などを作って販売すれば、すぐに売上がアップすると考えるのは危険です。余程タイミングが良いか、参入する市場に大きな影響力を持っている人脈がないと、考えているように売上は伸びません。
どちらかというと出て行くお金と時間の方が増えてしまいます。これを「地域貢献」「社会貢献」と考えるのなら問題ありません。しかし、会社の経営として見ると、良い投資とは言えないはずです。
製造業さんが「コト売り」へビジネス変革をされるのなら、最低でも3年間は何も成果が出なくても継続する覚悟を持ってほしいと思います。
それくらい「企業や商社相手」の売り方と、消費視点での売り方は違いますし、お客様の集め方も違います。そして、何よりも「買う」と決めるタイミングや金額が違います。
一般消費者は商社のように100個、200個、1000個とオーダーはしてきません。送料が高いと購入されません。梱包が雑だとリピートされません。
会社全体が「消費者目線」を意識していくことが重要になってきます。これは現場の人たちだけではなく、経営層の人たちも「消費者目線」を意識しなくては成功できません。
5: まとめ
「モノ売りからコト売り」という話しがあります。大きな視点で見ると間違ってはいませんが、鮮度としては古い考え方です。今は「共感」まで生み出さないといけません。
また、「コト」を売れば何でもOK。こんな風潮も感じますが、大きな間違いです。コトを売るためにはモノが良くないといけません。
良くないモノをコトだけで売るのは詐欺行為です。僕が考える良いバランスは
「モノ>コト」 または 「モノ=コト」
こういう売り方です。そして、このバランスの先に「共有→共感」があります。
話しだけで「全部上手くいきそう」と考えないでください。また、ネットに出ている情報が最新のことだと考えないでください。
本当に鮮度の高いことは、小さな市場で先に出回り、使い古された後、メジャーな市場へ拡大し、ネットなどへ展開していきます。